撮影監督って何?
--- American DP System ---
撮影監督という言葉が日本でもようやく使われるようになりましたが、まだまだ本来の意味やそのシステムが理解されていないのが現状です。 撮影監督は英語のDirector of Photographyを直訳した物ですが、その具体的な仕事内容を、そしてアメリカの撮影監督システムとはどのようなものなのかを、順を追いながら説明して行きましょう。 |
まず、DP(Director of Photography)の仕事内容ですが、およそ撮影技術に関するありとあらゆる技術的判断を行います。 照明、撮影のボスであり、どちらかといえばカメラを操作する事よりも、照明を作り上げカメラの露出を決定して行くことが大きな仕事です。もちろん、これらはアメリカの撮影監督組合(American Society of Cinematographers)が決めたルールですので、予算のない、撮影組合が絡まない仕事や、撮影組合に入っていない撮影監督などは、カメラオペレーターを使うことなく、自分でカメラを操作することもあります。またコマーシャル撮影に関しては撮影監督がカメラオペレーターを兼任しても良いといったように細かな取り決めがありますが、劇映画やほとんどのテレビシリーズでは、複数のカメラを使用し一気に撮影して行くことが多いので、カメラオペレーターの存在は重要です。 さて仕事が決まると、DP はまず監督の望んでいる映像とはどうゆうものなのかを、監督、プロダクションデザイナー達と検討し、それにあわせ、撮影機材リスト、照明機材リストの検討に入ります。 そしてどのようなトーンに仕上げるか、フィルムを選び、現像所等と打ち合わせを行います。 また、不必要な機材を長い間持っている事のないよう、撮影機材に関してはファーストアシスタントカメラマン(フォーカスプラー)が機材調整の補佐をしていき、照明機材に関してはギャファー(チーフライティングテクニシャン)がその助手でもあるベストボーイと共に機材の手配や調整をしていきます。 そして、撮影上特殊な状況下で撮影を行わなければならない時など、たとえば、クレーン、山の岩場、水上、炎を伴う撮影など、カメラを設置する事に関しては、キーグリップと共に検討していきます。 実際の撮影では、照明を決めて、それぞれのカメラのレンズを決定し、カメラの位置や動きを決め、露出を計測し絞りを決定するという、日本では三人(カメラマン、照明技師、チーフカメラマン)の仕事を一人で行うため、撮影現場では助手よりも忙しく動き回ることになります。 またでき上がった作品に関しては誰のものか明確になりますが、失敗すれば撮影監督の責任と言うことでもあります。 アメリカの優秀な撮影監督達は50代以降の人達が多く、これらは DP がいかに優秀な人材を持っているか、そして単に技術的な知識だけでなく多くのクルーをうまく動かす技術を心得ている、人間的な人物である必要性から来ていると思われます。 |
さて、日本のシステムとかなり違うことがおわかりになれましたでしょうか。これだけ違うということは、彼等アメリカやイギリスのクルーにとっては、日本のシステムも特異な世界であると言えます。 昨今でも、日本のチーフカメラマンが露出計を持って計測していると、彼がDP なのだと思い込んでいる外国人クルーを見かけます。そして必ずといっていいほど、笑い話しになってしまいます。 このホームページの英語版では逆に日本の撮影システムを紹介しています。 違った文化の人々が共同で作業する事が多い今日、少しでもお互いの理解に役立てればと思っています。 Seigo Sakamoto JSC/SOC |