はじめに。
今回のモービル石油テレビコマーシャルでは、実際のサービスステーションでのムービー撮影が様々な条件から行うことが出来なかった為に、画面構成上必要な人物や車はスタジオでのブルーバックによる撮影となりました。
実際の撮影ではサービスステーションの映像を6X7版のスチールカメラで撮影し、スタジオでの人物や車は35ミリムービーカメラで撮影、この素材に対してサービスステーションの背景画や車の写り込みなど多くの素材をフォトショップを利用し加工しながら、最終的にはヘンリーデジタル合成機により作り上げて行きました。
上の二つの画像は左側が実際のサービスステーションでのスチール画像、ここでは多くの不必要な部分、例えば電線や建物などが写っていますが、これらを取り除きテスト段階で仮合成した物が右の映像になります。
また他のシークエンスでも必要となるバックの絵を計算し、それらの対象物とカメラの距離を正確に計測したデータをスタジオに持ち込み、そしてサンパスプログラム(デスクトップシネマトグラファー参照)を利用してサービスステーションでの太陽の角度を割り出し、スタジオでのキーライトの位置を決めて撮影していきました。
左の画像がこのシークエンスでの最終画像です。
さて、このような合成でもっとも注意しなければならないのが、それぞれの絵に対するレンズの画角にあります。
サービスステーションでの撮影はスチールカメラでマミヤRZ67Pro2にセコールZ110ミリレンズ、使用したフィルムは暖色系のコダックエクタクロームE100SWフィルム、スタジオでの撮影はムービーカメラでArri435にツアイスノーマルスピード32ミリレンズ、レンズフィルターには画質をなじませるためにソフトFX フィルターの1/2番、使用したフィルムはコダックVision500Tでした。
特にスタジオでのブルーバック撮影では決してASA500のVision500T高感度フィルムはベストな選択ではないのですが、車のバックとなるブルースクリーンの広範囲な照明に対して、もちろん予算の問題からタングステンライトによる照明と(キーライトは20Kスーパーレオ)、被写界深度を十分にとるためにあえて高感度フィルムを使用しました。
一般にはブルーバックなどの合成においては、フィルムのシャープネスや感度の点からもVision200T(ASA200) がベストであるのは言うまでもないのですが、実際テレビでのオンエアを対象にする分にはVision500Tは十分対応できるフィルムです。しかしプリント合成では多少つらい部分があるかもしれません。
またブルースクリーンプロセスでよく問題になる事柄に、ブルースピルという撮影対象物の輪郭にブルーの光が回り込んできてしまう問題があります。
これを回避するために撮影対象物とブルースクリーンを出来る限り離しブルーの光の回り込みを押さえます。また今回は行いませんでしたがアンバーの光を被写体斜め後方から当ててブルーの光を相殺する方法もあります。
特に今回は車というメタリックで出来た被写体であったために、このブルースピルには多くの注意を払いました。どうしても回り込んできてしまうところにはダーリングスプレーによりぼかす作業も行っています。
そして対象物の輪郭を少しでもなじませるために薄いディフュージョンフィルター(ソフトFX1/2番)をレンズにかけて背景とのマッチングに努力しました。
と言うわけで大合成撮影となってしまいました。
代理店: | 東急エージェンシー |
制作会社: | キャット |
プロデューサー: | 渡部晃一郎 |
制作: | 飯生浩章 |
監督: | 丹羽寿宏 |
撮影監督: | 坂本誠吾 |
ギャファー: | 石塚裕治 |
撮影助手: | 小林 元 藤田恵太 |
メイクスタイリスト: | 志賀きく枝 |
SFXスーパーバイザー: | 川添和人 |