ニッポン近代化遺産への旅
大成建設株式会社
Pictured in Aaton XTR & Arri16SR.

 今から100年ほど前、海外の技術を取り入れながら日本人が独自に作り上げた素晴らしい建造物。日本各地に残るそれは建物、鉄道、ダム、トンネル、鉄橋等々。
 この作品はイラストレータの南伸坊さんを道案内役として描いていく短編映画です。

 ロケーションは北海道から九州まで30カ所以上にわたり、撮影は半年以上に渡って行われました。  当然ながら撮影したフィルムをどうやって確認していくかが問題になってくるのですが、今回はインターネットをフルに活用し対応しました。

 実際に私は、その日またはシーンの中でキーとなるショットをデジカメで撮影し、それをマックで私が意図するトーンに加工したものを電子メールと共にタイマーへ送り、タイマーはその画像を参考にタイミングデータを作り上げていきます。ネガをこまめに送ることにより遠隔地にいたとしてもそのデータを手に入れることが出来るのです。

 電子メールの素晴らしいところは、好きな時間に読み書きが出来ると言うことです。現像所との連絡が取れる昼間、撮影現場でそれどころではなくとも、撮影終了後にゆっくりと連絡事項の確認が出来る点です。

特に地方のロケーションではその威力を発揮するのですが、ホテルや旅館によってはパソコンを直接接続できないところもまだ多くあり、カプラーと呼ばれるパソコン通信が行われるようになった20年ほど前のシステムを使わざるを得ないところもあります。

 現在ではテレシネによるビデオデイリー(本当の意味でアメリカなどで行われているようになるには、日本ではもう少し時間がかかると思われますが)も可能になりました。この時にネガやプリントの状態をタイマーから伝えてもらうのはとても重要なことと思います。

現像所イマジカのタイマー廣瀬亮一さんからは、タイミングデーターやネガの状態などをメールで教えてもらい、数日後にロケ現場に送られてくるビデオデイリーを確認する時の参考データーにしました。

 実はアメリカではもっと進んだことが研究されていて、撮影監督 Ron Garcia,ASC のアメリカンシネマトグラファー1997年4月号[Picture Perfect]でもレポートされているように、現像されたネガを現像所でデジタルデータに変換し、それをインターネットを使って撮影監督へ送り、撮影監督はその画像を画像処理ソフト(フォトショップ等)で意図するトーンに加工しそれを再び現像所のタイマーへ送り返すことが試みられています。これにより現像所から離れた場所にいたとしても、足を運ぶことなくタイミングが出来るというものです。


 ただしこの場合もっとも重要な点は、お互いのモニターが同じ色再現をしていなければならない点です。この点マッキントッシュにはそのコンセプトの中に、[WYSIWYG]ウィジウィグ[What You See Is What You Get]見ているものが必要なもの、という考え方で「カラーシンク」というシステムが早くから取り入れられています。
 このカラーシンクというシステムは、コンピューターで出力された印刷物とモニターで見ているものとが同じになるようにと印刷業界のために作られたシステムですが、このシステムを利用しながら、さらに[Colortron Digital Color Ruler]という1400ドルほどのモニターの色を計測し調整する機械で、それぞれのモニターを同一の色再現にしこれにより私たちが必要とする環境を整えることが出来るのです。

 Ron Garcia によればノートパソコンでもその液晶画面を他のモニターと同じにすることが出来るとのことですが、この場合はフルカラー表示が出来る、つまり16万色表示可能なものでないと意味がありません。
 なお参考のために、マックで作られた画像をウィンドウズで表示させるとガンマ特性の違いから全体がアンダーに表示されてしまいます。この問題に関しては近い将来解決することを期待します。


 さて最後に、現在もっともパワフルなコダックプレビューシステムについて。
(このシステムはコダックとパナビジョンとの共同開発で作られましたが、日本での導入はまだ未定とのことです。)

 このシステム、200万画素のデジタルスチルカメラで撮影された画像を、ラップトップコンピューターに取り込んでその画像を自由に加工しながら、デジタルプリンターでハイクオリティな画像を出力させるというものです。
 これにより現場のスタッフやポストプロダクションとのコミュニケーションをよりシンプルにし、撮影監督の望んでいる画像を瞬時にシュミレーションする事が出来るのです。
 そしてこのシステムの心臓部ともいえるソフトウエアには、フィルムタイプ、露光指数、プリンターライト、フィルターワーク、レンズ、フラッシング、増感、減感、銀残し、等あらゆるデータがプリセットされていて、フィルターに関しては、ティッフェン、ロスコ、リー、シュナイダー、そしてコダックのラッテンフィルターの全データを、そしてレンズはパナビジョンのプリモレンズを総てカバーしシュミレーションすることが可能です。

 またこのシステムにはカラーゾーン量子化機能と呼ばれるものがあり、イメージ上のカラーデータを最暗部から最明部まで1ストップ毎に区分して表示させることが出来る機能です。これは、以前コダックで発表されたシネマトグラファーズツールキットの中にあったソフトを、さらに高機能化させたものです。
 当然ながらこのシステムはそのデータをデジタルで保存することが出来るので、インターネットを利用して遠隔地へもそのデータを送ることが簡単に出来ます。
 近い将来、このようなシステムを使ってクルーの間でのやり取りが行われるようになるのでしょうか?とても興味深いシステムであることには間違いありません。


Staff title
旅人: 南信坊
語り: 壇ふみ
監修: 清水慶一
制作会社: 日本映画新社
プロデューサー: 増田彰久
中嶋康勝
脚本: 小和野清史
平田修一
監督: 畑中義昭
撮影監督: 坂本誠吾
撮影助手:



菅沢耕一
小林元
人見健一
君塚常夫
ギャファー: 重田清三
エレクトリシャン:




西山嘉治
澤村恒美
宮島忠
長浜彰
古尾裕行
制作主任: 武井哲
ネガ編集: 庄司茂
ヘアメイク: 吉川礼子
カラータイマー: 廣瀬亮一
現像: イマジカ
フィルム: EK Vision200T
EK Vision500T
EK 7231 B/W


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