織田裕二「Mirage」プロモーションフィルム。
この作品は都内某所の廃屋と化したボーリンク場でのロケーション。
美術小道具を運び込んで、ボーリングレーンの上にセットを建てての撮影になりました。建物には電気が入っていないために、4階のフロアーまで全ての機材、プロップを手で運び込むという大変な作業から始まりました。当然ながらライトを含む全ての電源はジェネレータから配電されますが、これも駐車場に置かれた電源車からケーブルを引いて来なければならないために、準備にはかなりの時間を使いました。
さて、この作品では企画の段階から「画質を荒らしたい」という監督からの要望があり、この問題について説明したいと思います。
今日ではフィルムの性能もかなり良く、以前に比べて画質が荒れにくいように出来ていますが、一般にフィルム露光に関しては以下のような特性があります。
露出オーバー。 | 露出アンダー。 |
フィルムの粒子を抑える。 輝度が増す。 濃い黒を作り上げる。 コントラストが増す。 |
粒子が目立つ。 輝度が薄くなる。 くすんだ黒を作る。 コントラストを抑える。 |
また、現像に関しては、
増感現像。 | 減感現像。 |
粒子が目立つ。 輝度が増す。 濃い黒を作り上げる。 コントラストが増す。 シャープネスが増す。 感度を高くできる。 |
フィルムの粒子を抑える。 輝度が薄くなる。 くすんだ黒を作る。 コントラストを抑える。 シャープネスを抑える。 感度を低くできる。 |
これらの事柄から、今回は粒子を目立たせることで「荒れた画質」と言う監督の要望に応えることにしました。
使用したフィルムは、コダックビジョンフィルム500T(タングステンタイプASA500フィルム)。これを2倍増感現像し、さらに3分の2アンダー露出により ASA1600 で撮影しました。
なぜ3分の2アンダー露出かというと、これは私の経験値でしかありません。これ以上アンダーにしてしまうと、逆に粒子が目立ちすぎ、また黒が浮き上がったいわゆるスモーキーブラックになってしまいます。
本来時間と予算が許されるなら、これらはテスト撮影をするのがベストなのですが、なかなかそうもいかないのが辛いところです。
実際の撮影では絞りはT2からT2.8の間、フートキャンドルで言うところの3から6に相当します。このフートキャンドルというのは理論的に表す光の量で、1フィート離れたところにある1本のロウソクの光が「1フートキャンドル」。3フートキャンドルならば3本のロウソクが1フィート離れたところにある光の量です。
撮影現場では、本当にこんなに暗くて大丈夫なのかと言う声も聞こえました。実に薄暗い世界です。
結果は計算通りに私が狙っていたトーンを作り上げることが出来ました。
今回紹介するスチール画ではなかなか実際のトーンを見せることが出来ないのが残念です。
アリフレックス16SR 400' マガジン X2 ロングファインダー バリアブルスピードコントロール フォローフォーカス 4X4マットボックス ビデオアシスト 4mm T2 オプティクス 8mm T2 ツアイス 10-100mm T2 ツアイスズーム マイクロフォースズームコントロール ウォームソフトFX 1/2,1 サクラースタジオ7 マイクロフォースハンドル カルトーニ ロンフォード ヘビー Big & Baby ハイハット スプレッダー 14インチVideo combo トラックドーリー大型 タイムコードスレート |
(プログレッソ)
2.5k HMI x1 1.2k HMI x2 1k パーライト x2 2k タングステン x2 センチュリースタンド スティックアップライト 350W アイランプ x6 ジェネレーター30k スモークマシン |
制作会社: | エンジンネットワーク ビックブラザー |
プロデューサー: | 塩崎健太 |
制作: | 炭田博士 |
監督: | 中井庸友 |
撮影監督: | 坂本誠吾 |
美術: | 飯田芳郎 |
ギャファー: | 佐々木哲男 |
撮影助手: | 垣内恵美子 |
照明助手: | 花村浩 並川祐也 |
現像: | ヨコシネディーアイエー |
フィルム: | EK7279 |