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フロントボックス







Front Box

フロントボックス(Front Box)はファーストアシスタント(フォーカスプラー、日本のシステムで言うならばセカンドアシスタント)がカメラヘッド前部に取り付けて使用する道具箱です。パナヘッドやアリヘッド等のメジャーなギアヘッドには、同一規格のフロントボックス用取りつけネジがその前部にあり、このネジに引っかけるようにして取りつけます。
それ以外のヘッドでも、たとえばサクラースタジオヘッドやオコナー等、アメリカの多くの機材屋は独自に加工した取りつけ用プレートをヘッド前部に取りつけてあります。

私がアメリカに渡った1984年当時、この道具箱の持つ独特の職人的な雰囲気に何としても手に入れたいと思いましたが、どこにも売っていませんでした。それもそのはずで、現役のファーストアシスタントがオーダーメードでセカンドジョブとしてこつこつと手作りしており、暖かみのあるオーク材を使用し、ネジや釘を使わずに組み合わせられて作られた、まさに芸術的とも言える物でした。
やっとの事で連絡が取れると、2ヶ月待ちとの返事。是非作ってほしいとお願いし、2ヶ月後にようやく手に入れることが出来たのです。

このフロントボックスは、これを使用することにより撮影現場で必要な道具類、テープメジャー、ブロワー、マグライト、精密ドライバー、カメラテープ、ハサミ等々、を全てレンズすく下の位置に置くことが出来ます。

日本のアシスタントたちが腰に取りつけたウエストバックに小道具を詰め込んで作業するのとは違い、腰に道具をぶら下げる必要が無く、実際アメリカの現場ではほとんどのファーストアシスタント達は腰には何も付けていません。

またアメリカではセカンドアシスタント(フィルムローダーまたはクラッパーなどとも呼ばれ、日本のセカンドアシスタントのことではありません)が使用するスレート(カチンコ)をその下部に収納することが出来ます。
さらに、パナビジョンのズームコントローラーやマイクロフォースのズームコントローラー用の、フロントボックスに取りつける為の専用ホルダーが別に売られていたり、マグライナーに取りつけるためのアタッチメントもあります。

かつて私がファーストアシスタントとしてこのフロントボックスを使用していた時は、フロントボックスの前部、つまりスレートフォルダーの上部に金属製のパイプを車のバンパーの様に取りつけ、これにフォローフォーカス用のウイップエクステンションを差し込んで常に常備していました。

ところで、この様なフロントボックスが使用されてきた背景には、ハリウッドなど多くの映画製作現場でフィッシャーを初めとしたドーリーが常に使用されいることがあげられます。これは日本のように三脚に取りつけたカメラをセカンドアシスタントが担いで移動させる事が無い為で、当然ながら三脚を担いで移動させる現場、日本ではほとんどの現場がそうなのですが、この場合はフロントボックスが邪魔になるのは言うまでもありません。
ちなみにアメリカではカメラから下のヘッドや三脚の移動はグリップの仕事です。
そして、日本ではカメラの移動撮影用として考えられているフィッシャーやドーリーも、アメリカではカメラを撮影場所に持って行くための道具として多用されていて、メジャースタジオにはステージごとに常備されていたりもするのです。
フィッシャーピィーウィー等のドーリーを使用するメリットは、微妙なカメラ位置の調整が簡単に出来ることもあり、如何に現場で楽に作業が出来るか、そしてそのための合理的なシステムなのです。

なお、現在でも多くのファーストアシスタントがこのフロントボックスを使用しておりますが、今では何種類かのフロントボックスがフィルムツールスタジオデポ等を初めとしたウエブサイトで販売されています。
特にフィルムツール(Filmtools.com)は撮影関係者必見のウエブサイトで、アシスタントが使用するあらゆる小道具はもちろんの事、およそ考えられる撮影用の道具を取りそろえており、面白いのはAltoidsまで売っているところです。私もそうでしが、フロントボックスにガムの代わりにAltoidsを入れてあるファーストアシスタントは多いのですよ。もちろんこのサイトは日本からの購入も可能です。

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